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日本庭園

​尼歌集

​浜手幹線​

​第61回 2023/6/10
誰もが知っている山手幹線とは対照的に、馴染みがない浜手幹線。実は、国道四三号線のことである。戦前から尼崎を東西に走る道路としては国道二号線があったが、臨海部には東西を繋ぐ大きな道路がなかったために新たに作られた。浜手幹線という呼び名の他にも「第二阪神国道」と呼ばれたり、道幅に因んで「五十メートル道路」と呼ばれたりしていた。
昼夜を問わず物資が運ばれている国道四三号線には​、使命感を持ちながら荷物を運ぶトラック運転手の方々が多く行き来している。その運転手一人一人に色々なドラマがあり、人々の想いを乗せて走る姿を詠んだ都々逸。
「大〜」「荷〜」「刻〜」「どう〜」で第二国道の折句となっている。

大事だからと 

荷物をとって 

濃くなる夜を​

どう過ごす

​尼っ子リンリンロード​

​第62回 2023/6/25
尼崎のサイクリングロードとして知られる尼っ子リンリンロード。阪神尼崎駅から蓬川緑地、であい橋、尼ロック、スポーツの森、魚釣り公園と尼崎の名所をつなぐ十一キロのコース。子供の自転車デビューや名所めぐりにお勧めのサイクリングロード。​
サイクリングを楽しみながら感じる眩しさの理由は何なのか。漕ぐ足が軽いのは何故なのか。どんな青春の一ページなのか、想像を掻き立てる短歌。
今回は折句の制限なく自由に詠んだ爽やかな歌。

まぶしさの 理由も言わず 漕ぐ足の

​        軽さと笑みを 運ぶ春風

​稲葉荘

​第63回 2023/8/10
JR神戸線と国道二号線、武庫川と尼宝線に囲まれた稲葉荘。尼崎では有名な関西労災病院がある。明治以降は大庄村と呼ばれていた今北地区は、昭和に入り尼崎市となり、稲葉元町、南武庫之荘、稲葉荘、西立花町、大庄北、浜田町、水堂町となった。
地名もどんどん変わってきた様に、いつの世も無常なもので、あらゆるものは絶えず移り変わるものである。
​武庫川の近くにある稲葉荘でも、変わりゆく人々の生活を見守ってきたのだろうという儚さを詠んだ短歌。
「イまも〜」「ナがるる〜」「ハげし〜」「ソいて〜」「ウき世〜」で「稲葉荘」の折句。

今もなお 流るる川の 激しさに ​

       沿てただゆく 浮世なる哉

​カリヨンガーデン​

​第64回 2023/8/25

カリヨンの 音色の響く のどかさに​

        賑わう声も 渡る空かな

 尼崎市民なら誰もが知る「つかしん」は一九八五年に開業したショッピングセンター。開業前の計画名は「塚口新町開発発展都市」で、略称として「つかしん(塚新)」と糸井重里により命名された。尼崎市の姉妹都市であるドイツのアウグスブルグの街並みをモチーフとした景観が特徴である。
 そのつかしんにあるカリヨンガーデン。カリヨンとは組み鐘のことで、つかしんのものは旧西ドイツで最も古い鋳造工場で作られた。二オクターブ二五個の鐘がコンピューター制御により自動演奏をする。
 夏は噴水で水遊びする子供達で賑わっており、冬にはクリスマスツリーが設置され、撮影スポットとなっている。公園の美しい街並み、子供たちの歓声、カリヨンの音色が響く青い空など、日常の幸せな情景を素直に詠んだ短歌。「鐘の庭」の折句となっている。

​南塚口町​

​第65回 2023/9/10

皆の目の 見続けたれど かくとだに ​

          近くも遠き 南塚口 

北は阪急塚口駅から南は山手幹線、東はピッコロシアター、西は園田学園女子大学までと広い面積を持つ南塚口町。駅前にはさんさんタウンやソコラ、尼崎北警察署など尼崎を象徴する施設の多い街である。
尼崎市民には馴染みのある身近な南塚口、近くにはあるものの今は少し遠くに感じてしまう寂しさを詠んだ和歌。あっさんが幼少期に住んでいた南塚口町を思い返しながら詠む。
「ミナの目の」「ミツづけた〜」「カクと〜」「チかく〜」で「南塚口」の折句となっている。

​稲川公園​

​第66回 2023/9/25

この秋の 浮世の空に拉えも言わず

      吹きつる風と 紅葉なるかな 

有名な猪名川公園ではなく、阪神大物駅近くにある稲川公園。大物駅の北側に大物公園が​あり、国道二号線を挟んで北側にあるのが稲川公園。春には桜が咲き、夏祭りが開催され、秋には紅葉も楽しめるという近隣の方々の憩いの場となっている。稲川公園の桜と紅葉を連想して一つずつ詠む。
「桜」
「らち」とは進むべき道を決めるもの。咲き誇る桜をくぐって眺めてみては、道ではない道を進む許されざる恋には変わりがないという切なさを詠む。「さくら」の折句。
「紅葉」
秋の物哀しく憂鬱な中で見上げた空でも、これほど気持ちの良い風が吹き、紅葉も鮮やかであるのだという詠嘆の情景を詠んだ。紅葉の古語「こうえふ」の折句。

咲く花を くぐりて望む拉らちも無き

        道に進むや 稲川の恋  

​梶ヶ島​

 島 静心なき かの頃を 

       忍びて今朝も 参る 住吉  

大阪との境を流れる左門殿川(神崎川の支流)に隣接する梶ヶ島は「丁目」のない単独町名で、町の三分の一をコーナンとジョーシンが占める住宅街。神功皇后が新羅遠征から凱旋する際に船を寄せたことからその名がついたとされる梶ヶ島住吉神社がある。各地にある住吉の名を冠する神社同様、梶ヶ島住吉神社も神功皇后及び住吉三神を祭神としている。
​神代の昔から今に至るまで、人の世は穏やかに過ごせる暇もない。何となく落ち着かない日々と過去を思いながら今日も神社を参詣している心の様を詠んだ短歌。「かじがしま」の折句。梶ヶ島や住吉の語句を用いる。
​第67回 2023/10/10

​もみじ池​

​第68回 2023/10/25
尼崎の南西にある元浜緑地は、全国で初めて大気汚染対策の緑地として整備された。水遊びができる施設や大型木製遊具などがあり、尼崎市民に広く親しまれている。
園内には、大気浄化能力や汚染耐性が高い植物が数多く植えられている。また、ちびっ子が水遊びできる「わんぱく池」と、アジサイやスイレンが楽しめる「もみじ池」という二つの池もあり、豊かな緑と水辺空間を備える公園である。
 
もみじ池で四季を感じ、無常のはかなさを詠んだ短歌。
​「モと浜〜」「ミゆる〜」「チる〜」「イま〜」「ケふ(今日)〜」で、「もみじ池」の折句となっている。

元浜に 見ゆる紅葉の 散るさまに 

​      今逢ふ人の 今日明日を知る

​園田橋線​

​第69回 2023/11/10

そぞろなる 後の世なれば ただ今の

 儚  はかなしことを しつるころかな

園田橋線は、園田競馬場から藻川にかかる園田橋を渡って南下し、小田地区を通過した後杭瀬駅付近に至る。尼崎の東側を縦断する主要道路の一つである。
​あっさんは県立尼崎小田高校の出身。杭瀬はあっさんにとっては高校時代の思い出に満ちた町でもある。とはいえ、普通の高校生は将来のことをいちいち憂えることはない。「将来などわからないと、今できることばかりあの頃はしていたな」という、刹那刹那を生きる高校生の頃の心情を詠んだ短歌。
 
​園田橋の折句。

​クレープ&ガレット「honey bee cafe」​

​第70回 2023/11/25

見ゆる道々

付き合う人は

花を愛でつつ

​近き笑み

​阪神武庫川駅徒歩一分にあるクレープ&ガレット「honey bee cafe 」をご紹介。クレープのメニューが豊富で、ショコラクレープや惣菜系のツナエッグサラダなどが大人気。日替わりランチやお酒もあるお洒落なカフェ。
このカフェを営むのは武庫川の桜祭りやハロウィンイベントを主催するなど、活動的で大型バイクまで乗りこなす格好いい美人店長。
クレープ片手に武庫川に咲く花を眺めながら散歩する二人の甘酸っぱい情景を詠んだ都々逸。
「ミツバチ」の折句に加え、句の最後の文字「〜道みチ」「〜人ハ」「〜つツ」「〜笑ミ」を逆さから読んでも「ミツバチ」となっている。
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