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日本庭園

​尼歌集

​武庫川河川敷緑地テニスコート

​第31回 2021/12/25
南武庫之荘十二丁目の河川敷にある四面のテニスコート。コートの貸し出しは無料、要予約。
武庫川で思いを寄せる相手とテニスをしたけれど、恋が成就することはなかった。四季の移ろいのように、思う相手も移りゆくことを切なく詠った和歌。「恋をテニスる コトもなく」で「テニスコート」を、「君を行カセン シキのうつろい」で、「河川敷」を表現している。

武庫の川 恋を手にする こともなく

       君を行かせん 四季のうつろい

​鳥場公園

​第32回 2022/1/10
立花西小学校に隣接する鳥場(とりば)公園。大木をモチーフにしたすべり台や、ジャングルジムなどの遊具がある子どもたちのオアシス。
渡り鳥が休む場所でもあり、人が癒やされる場所ともなる鳥場公園のありがたみを詠った和歌。「南〜」「向こ〜」で南武庫之荘を表し、「鳥場公園」も入れ込まれている。

南へと 向こう鳥にも 安らかに

​         休む場となる 公の園

​阪神杭瀬駅

​第33回 2022/1/25
杭瀬駅は、阪神電鉄本線の開業と同年に開業された兵庫県最東端の駅。北側の杭​のような形のエレベータ塔には、阪神沿線最大級である社章(レールの断面を稲妻で囲ったデザイン)が掲げられている。
あっさんの母校近くにある杭瀬駅。別れの季節を迎えた若者が、伝えきれなかった思いを胸に旅立つ様を詠った現代短歌。​杭瀬の折り句が二度繰り返されている。

来る朝に 今は別れの 切なさの

​       悔いのみ残る 背伸びした夏

​玉江橋線

​第34回 2022/3/25
阪神尼崎のアルカイックホールから川西を経由して池田まで続く「​兵庫県道十三号尼崎池田線」は、「産業道路」や「玉江橋線」と呼ばれている。
現在の橋は、行政の区切りとして利用されたりもするが、昔はあの世とこの世を結ぶと言われており、いろいろな人との出会いや別れを織りなす場所でもある。
時々しか会えないながらも、その日を心待ちにし、庄下川に架かる玉江橋で再会する​というロマンチックな都々逸。「タマに〜」「エにしの〜」「ハシり〜」で「玉江橋」の折句となっている。

たまに会ふ日が

縁の要 

​走り寄り添ふ

玉江橋

​潮江公園

​第35回 2022/4/10
タコのすべり台がある潮江公園は、「タコ公園」と呼ばれている。昔はタコの足のように稲の根が張りますようにという願いを込めて、半夏生にタコを食べたと言われている。芭蕉も「蛸壺や 儚き夢を 夏の海」と、寝床かと思っていたら漁師に獲られるタコの儚さを詠んだ。
青春を謳歌するあっさんが、夏に潮江公園の大きなタコの滑り台の中で将来を語り合った日を思い出しながら詠んだ俳句。「〜指差シ オエた〜」で潮江を表している。

タコの中

  ​夏に指差し終えた夢

​生島神社

​第36回 2022/4/25
​尼崎にある生島神社は、仁徳天皇が三一三年に浪速の地を高津宮に定めた時に、生島大神を栗山村にもおいたと言われており、長野県の生島足島神社の明神大社と祖を同じくしている。生島大神は大阪の生玉神社と、足島大神は佐久島大神と同神だと言われている。
古から続く生島神社に思いを馳せながら、尼崎から大海原に浮かぶ島々を眺める女性の黒髪が、春風になびく様を詠んだ和歌。「わタルシマ島」で「足島」を、「青イクシマで」で「生島」を表している。

わたの原 渡る島々 かよう風

​       青い櫛まで 包むこの春

​椎堂

​第37回 2022/5/25
​尼崎市の椎堂(しどう)は、街の北半分が園田競馬場で、東側は猪名川公園という緑の多い住宅街。二十八代宣化天皇の子である火焔(ほのお)皇子を祖先とする一族の椎田公がこの地に居住し、古語で「堂」は「だう」と書くことから、椎田から由来していると考えられる。
椎堂にある十九(とうく)神社は、伊勢神宮外苑に祀られている豊宇気毘売命(とようけびめのみこと)が御祭神である。豊宇気毘売命が祀られている神社のお堂の炎がずっと消えないように願う和歌。「まつられシ 堂の〜」で「椎堂」を表している。

​ちはやぶる 神代の姫の まつられし

       堂の焔の 久しかれとぞ 

​船詰神社

​第38回 2022/6/10
​船詰神社は園田駅の北東にある神社で、鳥之磐楠船命(とりのいはくすふねのみこと)を御祭神とし、別名で天鳥船命(あめのとりふねのみこと)と言われ、海・陸・空の交通運輸の祖神とされている。伊耶那岐命(いざなぎのみこと)と伊耶那美命(いざなみのみこと)の間に生まれた神で、神が乗る船の名前ともされている。日本書紀では、不具の子として生まれた蛭児(ひるこ)を天磐櫲樟船(あまのいわくすふね)に乗せて流したとされる。蛭児は流れ着いた先で、神聖な漂着物である恵比寿様として祀られたとも言われている。
船の浮きと不遇の神の憂き、潮の流れと運命の流れをかけつつ、船詰神社に想いを馳せながら詠んだ和歌。
​「古き〜」「流れ〜」「つらさ〜」「巡る〜」で「船詰」の折り句となっている。

船詰や 古きころにも 流れゆく

       つらき定めの 巡る浮き世か

​尼崎市記念公園(ベイコム)

​第39回 2022/6/25
​尼崎市では通称「尼記念」として親しまれている尼崎市記念公園。一九四○年に神武天皇即位から二六〇〇年を記念して造られた、陸上競技場、野球場、テニスコート、体育館などを備える尼崎を代表する公園である。
高校時代に吹奏楽部でマーチングをしていたあっさんが尼記念で練習していた思い出を振り返り、青春の日々を詠んだ和歌。「明日〜」「まだ〜」「君と〜」「念じ〜」で「尼記念」の折句となっている。

明日の身も まだ見えぬ日も 君とゆく

​       念じたたずむ 尼記念かな

​庄下川

​第40回 2022/7/10
​東富松川の伊丹市境を起点とし、尼崎を南北に流れ、尼崎港に注ぐ庄下川。高度経済成長期以降、工業都市として尼崎の街が発展する中、工場排水などで水質が著しく悪化したが、整備工事により現在では鯉が住めるほどに改善している。
川沿いに公園も多く、尼崎市民がそぞろ歩き【逍遥(しょうよう)】する憩いの場となっている。そんな庄下川を浴衣で二人連れ添って歩く様を詠んだ短歌。「じっトマツ」「尾浜〜」「尾浜のかのコ ヤみのうち」で、富松・尾浜・昆陽(川)と並べて庄下川が流れる場所を表し、「ショウ遥〜」「下駄の〜」で「庄下川」を表している。

じつと待つ 尾浜の彼の子 闇の内

​        ​遥の宵 下駄の軽き音

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