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日本庭園

​尼歌集

​尼崎のびのび公園

​第41回 2022/7/25
尼崎の最南端にある海沿いの尼崎のびのび公園。あまり手入れが行き届いておらず、草がのびのびになっているとの情報も。訪れる人が少ないので、子供がのびのび遊べて、コロナ禍においてはありがたい公園なのかも。
草が伸びしきるこの道は遥か遠くまで続いている。昔この道を歩いた人たちに思いを馳せ、世の中を偲ぶ炎が風に揺らいでいるゆうべを詠んだ和歌。
​「草のノビ ノビゆく道に 世をしノビ ノビノビ風に 揺れる宵かな」と「ノビ」を多用してのびのび公園をアピールしている。

草の伸び 延びゆく道に 世を忍び

       野火の微風に 揺れる宵かな 

​尼崎市立歴史博物館

​第42回 2022/8/10
二千年を超える長い歴史遺産を持つ尼崎の文化財収蔵庫と地域研究史料館を統合し、二○二○年に歴史博物館が開館した。南城内にあった成良中学校校舎を利用した趣のある博物館。
​博物館の展示物は時を越えて我々に思いを届ける手紙のようなものだと、昔の生活に想いを馳せて詠んだ和歌。
「館〜」「物〜」「博〜」「史〜」「歴〜」逆さまから読むと「歴史博物館」を表している。

館には 物悲しくも 博き世の

​        史の残りに 歴る時の声

​出屋敷

​第43回 2022/8/25
阪神電鉄本線の出屋敷駅は、開業と同時にオープンし、尼崎海岸線とのターミナル駅として栄え、主要駅の一つだった。その後尼崎海岸線が廃止され準急がなくなったことにより現在は普通電車のみの停車となったが、阪神電鉄本線の尼崎市で三番目の乗降数を誇る。
出屋敷駅近くに住んでいた祖母に連れられ、近所のお好み焼き屋で、厳しくも優しく諭された思い出を振り返りながら詠んだ都々逸。「デ来の〜」「ヤさしい〜」「シかる〜」「キづく〜」で「出屋敷」の折句となっている。

出来の悪さを 優しい声で 

     叱る心に 気づく夏

​尼宝線(兵庫県道42号線)

​第44回 2022/9/25
尼崎と宝塚を結ぶ県道四二号線は「尼宝線」として親しまれている。元々は鉄道が走る予定だったが、計画が頓挫してしまい尼宝線となった。
一一五六年保元の乱で後白河上皇に追われ、崇徳院が讃岐まで逃げる途中に立ち寄ったことに由来するのが尼崎の崇徳院。そして尼宝線の西大島交差点より南は、一九二号線となり尼崎港崇徳院線と呼ばれていることから​、今回は崇徳院の歌を本歌取りした。
道別れてしまい再会しようと願っていても、もう二度と会えないこともあるという切ない歌。「シニゆく〜」で四二号線を、「死にイクフた沫」で一九二号線を表現している。
 

瀬を速み 尼を流るる 滝川に

      われてまた逢ふ 死にゆく泡沫 

瀬を速み 岩にせかるる 滝川の

     われても末に 逢はむとぞ思ふ

​                 崇徳院

​尼崎市章

​第45回 2022/10/10
尼崎市の市章は、工都を表す「工」とアマガサキの「ア」「マ」を図案化したもの。昭和十一年に小田村を合併した際に中央両脇の丸印を加えて今の形となった。
工業と尼崎に生きた人々に想いを馳せながら、秋の物悲しい季節を織り交ぜて詠んだ和歌。だんだんと寒くなる秋から冬、散りゆく葉と朝焼けが重なる中、朝の冷たい風にも負けず勤めに向かう工都尼崎の朝の情景を詠む。
「朝〜」「舞ふ〜」「重なり〜」「冷ゆる〜」「聞く〜」で「尼崎」の折句となっている。

​朝焼けに 舞ふ木々の葉の 重なりて

​       冷ゆる風の音 聞く勤め哉

​尼崎の水

​第46回 2022/10/25
尼崎の浄水技術は日本でも屈指と評価され、高度浄水処理により安全で良質な水が届けられている。阪神水道企業団は淀川、兵庫県営水道は猪名川を水源としており、それらからの受水で尼崎の水道は成り立っている。
尼崎には水が美味しい街というイメージはないが、最近では住みやすさが注目され、人気を集めている。公害や治安の悪いイメージが薄れ、尼崎に人が集まってくるようにという願いを込めて詠んだ都々逸。
「ジョウ手下手〜」「スイたら〜」「ジョウが〜」で「浄水場」、「甘い水」で「尼の水」を表している。

上手下手など 好いたら同じ​

​        情が移れば 甘い水

​佐璞丘公園(猪名寺廃寺跡)

​第47回 2022/11/10
​尼崎のJR 猪名寺駅から北東にある佐璞丘公園は、七世紀に建立された猪名寺が織田信長に焼かれ廃寺になったと言われる場所。唐の官制では左大臣のことを「佐璞射(さぼくや)」と言い、「佐璞丘」は、猪名寺を建立した孝徳天皇の左大臣であった阿倍内麻呂に由来するとされてている。
万葉の森とも呼ばれる公園の木々の紅葉や、秋の月の美しさを通じて昔を偲び詠んだ和歌。「猪名寺廃寺跡」の時の流れと秋の情景を詠む。
「イまは〜」「ナき人〜」「テる月〜」「ラく葉〜」で「猪名寺」の折句となっている。

​今はただ なき人を恋ひ

​   照る月に 落葉の影 猪名寺の秋

​芦原陸橋

​第48回 2022/11/25
​芦原陸橋は、五合橋線とJR神戸線の交差点にある大きな陸橋。陸橋のすぐそばには、芦原市民プールがあり、市民の夏の憩いの場となっていた。現在は老朽化により再整備等が検討されている。
​JR神戸線は尼崎市内を東西に走っているため、芦原橋は南側と北側とを繋いでいることとなる。市民の暮らしに根付いた芦原陸橋に思いを馳せて詠んだ都々逸。
一句目の一文字目、二句目の二文字目、三句目の三文字目、四句目の四文字目で「芦原」を表すという変則的な折り句となっている。

尼の南北 橋渡しする

​   芦原橋の ある暮らし

​阪神電鉄尼崎レンガ倉庫

​第49回 2022/12/10
​阪神尼崎駅にある阪神電鉄尼崎レンガ倉庫は、一九〇五〜一九一九年は電車を走らせるための火力発電所だった。赤レンガや建材は海外から取り寄せ、異国情緒を感じさせる名所となっている。現在は鉄道関連の倉庫として利用されているが、趣ある雰囲気を生かして、過去には写真展が開催されたこともある。
​火力発電により電力供給された阪神電車が街を走り、それにより街が栄えるという当時の情景を詠んだ短歌。
火力発電所の折り句となっている。今回は、まず折り句を決めて、情景を合わせていくという制作過程も明かす。

火の神の 力の源に 発車する

​      電車が担う 所の栄

牛たん割烹 和吉

​第50回 2022/12/25
​尼崎の武庫之荘一丁目にある「牛たん割烹和吉」をご紹介。二人の友人であるグルメブロガー「尼崎のおおさか」氏も大絶賛する黒毛和牛の牛タン専門店。ジャズの流れる隠れ家的なオシャレなお店。しんじろーもその美味しさを堪能済み。
美味しい牛タンを満喫すれば、何度も通いたくなるのも当然だろうという心境を詠んだ短歌。
「牛の舌」の折句となっている。

旨き夜に 舌鼓うち 後々も​

    頻りに問へば 楽しかるらむ

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