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尼歌集
桂木交差点
第11回 2021/2/25
山手幹線と道意線が交わっている、二人には馴染み深い桂木交差点。歩道橋は一九七五年に設置されたが、この放送後に改良工事のため撤去された。通学路となっている歩道橋は、学生さんも多く利用している。
家の方向が同じ気になるあの子と、歩道橋の上から見た情景を詠った都々逸。「桂木」の折句となっている。
かえるみちみち
つきみてわらう
ライトに映える
きみの顔
三和本通商店街「カムイロード」
第12回 2021/3/10
阪神尼崎から西へ連なる尼崎中央商店街を抜けた先にあるのが、南北に伸びる三和本通商店街。尼崎出身の小林可夢偉さんにちなんで「カムイロード」と呼ばれている。小林さんが、二〇一九年と二〇二〇年のデイトナ二十四時間耐久レースでキャデラックチームとして優勝したことにちなみ「デイトナ」の折句となっている。
出来る奴ぢゃと
いなせに走り
止まることなし
名も上げる
尼崎市のマンホール
第13回 2021/3/25
尼崎のマンホールは、中央にきれいな水に生息するホタルやトンボ、魚がデザインされ、市の花であるキョウチクトウがその周りを取り囲んでいる。市政百周年記念や尼崎城、近松、忍たま乱太郎などのデザインも。
マンホールを見て微笑んでいる人を見かけた時の微笑ましい情景を詠った短歌。「道の穴」の折句となっている。
みる人の ちいさき笑みの のどかさに
あかずながむる なにはなる哉
若王寺
第14回 2021/4/10
七七〇年代には建立されていた若王寺(なこうじ)というお寺に由来した地名。現在では小さくなったとはいえ、かなり広い地域が若王寺と呼ばれている。
歴史を感じさせる若王寺、人の営みに思いを巡らせながら詠った都々逸。「若王寺」の折句となっている。「こひしき」と「こひ」を同時に使う変化球に挑戦している。
ながきとしつき
こひしきひとと
うきよのこひを
じょうじゅさせる
池田街道踏切
第15回 2021/4/25
二〇〇八年までJR尼崎駅西側にあった有名な開かずの踏切。南北に五〇メートルの長さがあったこの踏切、ピーク時には一時間のうち五八分も閉まったままだった。
学生の頃にこの踏切近くに通っていた作者が、当時を思い出しながら詠った短歌。「今〜」「警〜」「絶〜」で「池田」、「文〜」「切り〜」で「踏切」の折句となっている。
今もなほ 警笛の音の 絶へ間無く
文読む月日 切りの無き夢
武庫川
第16回 2021/5/10
万葉集の時代から、恋をしたり、戦へ行ったり、京都を懐かしく思ったりする歌が詠まれてきた武庫川。
武庫川から六甲山に沈む夕日の美しさを詠った和歌。「武庫の浦」を折句にすることにより、縦にも横にも「むこのうら」を詠み込んでいる。
むこのうら
このひとときと
のぞむめに
うつくしきやま
らくじつのあか
であい橋
第17回 2021/5/25
北堀運河と中堀運河を結ぶ斜張橋で、運河と人が出合うことから、であい橋と名付けられる。尼崎運河のシンボルで、デートスポットでもあり縁結びの赤い糸が結ばれていることも。
工場や街の夜景を楽しむ二人が明日は運命的に出逢うかもというロマンを詠った短歌。「出逢ひは知る」に「であい橋」が隠されている。
尼の夜の 水面に光る 町の灯も
明日の出逢ひは 知る由も無し
残念さんの墓
第18回 2021/6/10
長州藩士山本文之助は、禁門の変で長州藩が敗れ、京都から敗走中に尼崎藩に捉えられ、取調べ中に自決した。その後長州びいきが流行り、反幕府の風潮と合体して、一種の流行神とされた。大阪から「残念、残念」と参詣者が押し寄せたため、「残念さん」と呼ばれた。現在でも一つだけ願いを叶えてくれると言われ、信仰を集める。
本懐を遂げることができなかった切なさを詠った都々逸。「残、念、さん、はか」の折句となっている。
残り心の
念じる空に
燦々と散る
はかなさよ
五合橋線
第19回 2021/6/25
塚口と十間を結ぶ主要道路。五合橋はアルカイック横の交差点にある庄下川を渡る橋のこと。
川を渡ろうと川の泡を眺めていたら、水面には雲が映りこんでいるという美しい情景を詠った短歌。 「五合橋」の折句となっている。
この川を ここで渡らむ うたかたの
はてにつらなる 白き雲哉
尼崎城
第20回 2021/7/10
尼崎城は、一六一七年に甲子園球場の三・五倍にもなる広大な城として築城された。明治六年に廃城となるが、ミドリ電化創業者の安保氏が十二億円の私財を投じて再建し、市民からも二億円が寄付され再建された。
尼崎城主で数多くの俳句を残した松平忠次の俳句を本歌取りした歌を紹介。「尼の春〜」は、竈は安定した生活の象徴であるが、寄付で再建されたお城はさぞ潤っているだろうという俳句。「雪ならで〜」は、雪かと思うほど美しいできたばかりのお城を詠っている川柳。
雪ならで まだ白くあり 尼の城
『本歌』
雪と見て また豊年か 村の梅
亀文
尼の春 城の竃も 霞む空
『本歌』
まず霞む 竃々や 民の春
亀文
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